秋月の水は甘いよ

親しくお付き合いさせていただいているキョーコさんとパートナーのKさんから秋月に来ない?蛍がきれいなのよ!とお誘いを受けた。

彼女たちは田舎のクオリティーライフを求めて秋月に数年前から通っている秋月フリークだ。秋月はかつて城下町として栄えていたらしいが、田園風景が美しい田舎で、いたるところに小川がせせらいでいて、丸みを帯びた石で積み上げられた石段が美しく、和やかな空気が流れていた。

まずは食欲を満たそうと、(既にこちらの意欲をお見通し)山中の蕎麦屋に連れて行ってくれた。古民家風のたたずまいが素敵で、空気も冷たくキリリと引き締まっている。小川のせせらぎを聞きながら手打ち蕎麦を胃袋に納めていくうちにだんだん身体をしばりつけていた糸が緩んで行く。そういえば正月以来、ノンストップだったもんなぁ。あったかい蕎麦茶をすすりながら『ほうっ』とため息をついた私でした。自分の住む唐津も立派な田舎だけど、仕事する場と訪れる場でこうも田舎の感じ方が違うものかと、さっそく思ったりもするのでした。

『訪れる』田舎となると、田舎を『訪れる者』としての役目はやはり、頭の中をOFFにして、そこにあるものを楽しむ事でしょう。まあ、連れていかれた場所全てが素敵で、リラックスにふさわしい処だったので、私たちはただあんぐりと口を開けるだけでよかったのですけれど。

さて、陽も没し、いよいよ蛍ナイトのショータイム。川を真ん前にお弁当を開き、明かりを暗くする。ちらほらと出て来た蛍を目の前に酒を交わし、まったりとした夜を楽しむ、という設定。

あ、でたでた!あそこ!あ、あそこにも〜!とひゃあひゃあ浮かれるのは人間の身勝手、というもので、蛍たちにとっては実は身を投じた真剣勝負なのだ。命がたったの10日しかない彼らにとって、しかも雨が続いてずっと閉じこもりだった状況からやっと解き放されて、『もはや、今夜しかメスを口説き落とすチャンスは無い!』と思う彼らの姿はデスパレートでやぶれかぶれ、と言えるだろう。

キレイだねえ、クリスマスライトのようだねえ、とのんきにうっとりしている人間の情緒とは裏腹に、蛍たちにとっては今宵限りの一発勝負なのだ。

『さあさあ、俺だ俺!ここにいるよベイビー!』とオスたちがギラギラと全身の精魂を振り絞って光を放ちまくっている様子は少し物悲しくもある。

ところで、蛍社会とは意外とフェアに出来ているらしく、みんなが同じタイミングで『イッセイのセー』で光を放っている。自分だけ目立とうと、他がだまっている時に ソロパフォーマーみたいに、一人だけ ピカっ!と出しゃばるやつはいない。 蛍ってバカだなあ、要領悪いなあ、と思いつつも、私のようなゲスな人間こそ、蛍のような謙虚さや秩序を見習わなければいけないのではないか、と思う夜でもあったのでした。

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